<二階元経済産業相>「東アジア経済連携協定」構想を表明
赤文字は引用者小楠より。
二階俊博経済産業相は4日、域内で包括的な経済協力関係を築く「東アジアEPA(経済連携協定)」構想を表明した。日本、中国、韓国、インド、東南アジア諸国連合、豪州、ニュージーランドの計16カ国で08年から交渉を始め、10年に締結する方針。10年までの政府の通商戦略、「グローバル経済戦略」に盛り込む。

中川昭一農相は7日の閣議後の記者会見で、二階俊博経済産業相が打ち出した「東アジアEPA(経済連携協定)」構想について「何となく唐突だ。その前にやることがいっぱいある」と異論を唱えた。
 同構想では、東アジア全体とオセアニアの自由貿易協定(FTA)を軸に経済協力関係を構築することを目指すとしているが、農相は正式な提示を受けていないと説明。構想推進による農産品輸入の増加などで、国内農業が打撃を受ける恐れを示唆し、「広い意味での国家戦略を認識しているのかいないのか」と批判した。
 中川農相は、構想が中国の参加を想定していることについても、昨年春に中国で起きた反日デモを念頭に「一般人や民間企業が襲われたことの総括もできていない」と語った。

日本総研
「東アジア共同体」とはいかなる存在か!

調査部 環太平洋戦略研究センター 顧問 渡辺利夫

私見を問われれば、東アジア共同体論は、次の3つの理由により実現不可能であり、かつ実現すべきものとは考えない。

1つは、政治体制や安全保障枠組み、価値観、社会理念の相違に由来する。例えば、共同体を共同市場として捉えるならば、少なくとも域内は多分に同質の市場でなければならない。賃金水準において圧倒的な格差をもつ東アジアにおいて労働移動の自由が保障された場合に起こる激しい政治的軋轢は、想像に余りある。発展段階において多分に同質な国家の集合体であるEUと東アジアの決定的な違いがここにある。

もう少し遠目にみても、政治体制の相違が共同体形成の阻害要因にならないはずはない。一方には、政治的意思決定を大衆の広範な政治参加によって実現する民主主義国家があり、他方には、党指導部の一元的意思決定が政府のそれに優先する一党独裁国家も存在する。その間には、様々な色合いをもった、ソフトな、またハードな権威主義国家がある。民主主義を国是とする国々の集合体であるEUと東アジアはこの点でも大きく異なる。

安全保障の枠組みにおいても東アジアは区々である。日米、米韓、米台、米比のようにアメリカを中心とする「ハブ・スポーク」の安全保障体系の中に組み込まれている国がある一方、中朝、朝露のような旧社会主義国の同盟関係も厳然として存在する。グローバリゼーションの現在においても紛争処理の最後の手段が戦争であることはなお否定できない。東アジアにおいて国境紛争問題を抱えていない国がいくつあるというのだろうか。

一旦緩急あらば、この分断的な安全保障の枠組みが悲劇的な結末を東アジアにもたらさない保障はない。そうであれば、共同体どころの話ではない。「悪の帝国」旧ソ連にNATO(北大西洋条約機構)をもって対峙したという「共生感」がEU統合を強固なものたらしめた背後要因であろうが、東アジアはそうした感覚をまったく共有していない。

第2は、ASEANプラス3において最大の経済規模をもつ日中韓3国の政治関係が緊張を孕んでおり、これは容易に解消できないであろうと予想されることである。

韓国の反日感情は相変わらず強い。しかも近年の日韓関係は、日本・朝鮮半島関係として論じられねばならず、それがゆえに対応は一段と難しい。目立った傾向は韓国の「北朝鮮化」である。冷戦時代において封殺されてきた朝鮮半島の「血族的ナショナリズム」が、冷戦が終焉し南北代理対立の構図が消滅するや、急速な高まりをみせている。核保有への疑惑が深まり、核兵器搭載可能なミサイルをすでに保有する北朝鮮と韓国が「一体化」することは、日本にとっての悪夢である。朝鮮半島における敵対勢力の阻止は近代日本の「国是」であり、日清、日露の両戦役がその歴史的事例である。

日中の政治外交関係は、1972年の日中共同宣言、1978年の日中平和友好条約以来、最悪の時期にある。国内権力基盤強化を求めて展開された江沢民政権の反日愛国主義路線は「草の根」にまで及んだ。市場経済における敗者の群れ、膨大な数の失業者や社会的不満層が反日運動に呼応した。新たに登場した胡錦涛政権は「対日新思考」をもって対日政策の路線変更を試みたものの、民衆レベルに根付いてしまった強い反日的センチメントに呪縛されて、身動きがとれない。極東アジアがなお19世紀的なナショナリズムの渦巻く諸勢力確執の場であり、確執を御する力が日本にあるかのごとき前提で東アジア共同体を論じてはなるまい。

第3は、東アジア共同体の影の隠然たる主役が中国であり、東アジア共同体を動かす最大の背景要因が中国の地域覇権主義だという事実である。この点は最重要のポイントとして主張さるべきものだと私が考えていることを承知していただきたい。

中国が東アジアにおいて地域覇権の掌握を狙っていることは自明であろう。国力の拡充を背後要因として著しい軍事増強を図り、台湾を統合して外洋進出に成功することは中国積年の夢である。シーレーンを安定的に確保し、石油エネルギー輸入を万全なものとしなければ中国の発展は保障されない。中国という資源不足の超大国の発展それ自体が、この国の覇権的行動を余儀なくさせているのだと考えねばならない。

地域覇権掌握の最大の障害が日米同盟の存在である。東アジアを共同体とし、これに日本を招き入れて日本の外交ベクトルを東アジアに向かわせ、そのことによって日米関係の離間を謀るというのが中国の地域戦略なのであろう。